相続が始まりましたが,遺産分割ができていません。遺産であるマンションからあがる家賃は誰のものなの?

 民法896条は,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と規定していますので,遺産分割によってマンションを取得した相続人が,相続開始後に生じた家賃をもらえるとの見解もありましたが,平成17年09月08日,最高裁判所は,「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。
 遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」

と判示し,家賃は,相続人全員が,相続分の割合で取得するものであることを明らかにしました。
 共有物の分割は,協議でする場合と裁判による場合があります。

1,協議による分割では,次の方法があります。
(1) 現物分割は,
  筆に応じて分割したり,あるいは分筆する方法です。
  筆毎の分割ではなく,数筆の土地全部を一括して分割し,一筆は甲に,他の筆は乙に分割することも許され,また,共有者が取得する土地の面積の割合や価格の割合が,共有の割合に応ずるものでなくとも,共有物分割である,とされています(大審院昭和10.9.14決定)。
(2) 代金分割は,
 共有物を他に売却し,その代金を分割する方法ですが,もっとも,代金は,共有者が直接買主に対し,分割債権を取得します。
(3) 価格賠償
  共有者の1人が他の共有者の持分を全部取得する代わりに,その対価を他の共有者に支払う方法です。

2,裁判による分割
(1) 現物分割が原則です。
(2) 代金分割は,競売によることが規定されています。
 民法258条
 「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは,その分割を裁判所に請求することができる。2前項の場合において,共有物の現物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命ずることができる。」
(3) 価格賠償の方法による分割
 最高裁判所第平成8年10月31日判決は,民法258条2項は,共有物の分割方法として,現物分割・競売による分割・その他の分割方法も許されるとして,
・当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると考えられること。
・その価格が適正に評価されること。
・当該共有物を取得する者に支払能力があること。
・他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは,共有物を共有者のうちの1人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法,すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許される。
と判示しております。