特別代理人とは何ですか?また,一時代表取締役代行者とは何ですか?

 民法57条で,
 「法人と理事との利益が相反する事項については,理事は,代理権を有しない。この場合においては,裁判所は,利害関係人又は検察官の請求により,特別代理人を選任しなければならない。」

 また,民法775条で,
 「前条の規定による否認権(嫡出否認のこと)は,子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは,家庭裁判所は,特別代理人を選任しなければならない。」

 また,民法826条で,
 「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において,その一人と他の子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」

 さらに,民事訴訟法35条で,
 「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において,未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は,遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して,受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。」

 という規定があり,要するに,以上の場合に,法人または未成年者や被後見人のために権限を有する者が一時的にその権限が行使できないときに,臨時で選任される代理人をいいます。

 なお,会社法の場合は,会社法第351条で,「代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には,任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は,新たに選定された代表取締役(次項の一時代表取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで,なお代表取締役としての権利義務を有する。」との定めがあり,また,同条2項では「前項に規定する場合において,裁判所は,必要があると認めるときは,利害関係人の申立てにより,一時代表取締役の職務を行うべき者(一時代表取締役代行者といいます。)を選任することができる。」と定めていますので,一時代表取締役代行者はありますが,特別代理人制度はありません。