3 市道廃止事件-原告適格の拡大(下級審の例)

 これは最高裁判所第一小法廷平成21年10月15日判決の事件です。
 経済産業大臣が,自転車競技法4条2項に基づき場外車券発売施設「サテライト大阪」の設置の許可をしたところ,その施設の周辺において病院等を開設するなどして事業を営み又は居住する人たちが場外車券発売施設の設置許可の取消しを求めた事案です。

 自転車競技法4条2項は,経済産業大臣は,場外施設の設置許可の申請があったときは,申請に係る施設の位置,構造及び設備が経済産業省令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる旨規定し,それを受け,自転車競技法施行規則15条1項は,位置基準を定めています。

 この事件で問題になったのは,この位置基準に書かれた次の2つの要件です。
 一つは,場外車券場は,学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設(以下「医療施設等」という。)から相当の距離を有し,文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがない位置でなければならないという基準です。
 二つめは,車券場の敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した場外施設付近の見取図,場外施設を中心とする交通の状況図並びに場外施設の配置図を添付すべきという要件です。
 原審は,一の医療施設等に原告適格を認めました。2の1000m以内の地域にある住民にも原告適格を認めました。
 最高裁は,二の周辺の医療施設等に,文教又は 福岡高等裁判所宮崎支部平成18年1月27日判決は,市道に面してホテルを経営する会社が,市長に対し,市道の路線廃止処分のうち一部の区間についての同処分の無効確認を求める訴えを起こした件で,道路法及び道路法施行規の解釈により,会社は,法律上の利益を有する者に該当するなどとして,原告適格を認めました。

 これは,原告の範囲を拡げた下級審の裁判例の一つです。
 行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」解釈の1例です。

 判決理由を抜粋しますと,
 「市町村道の路線廃止処分に関する道路法の規定・・・市町村長は,市町村道について・・・当該路線・・を廃止することができる(10条1項前段)。路線廃止手続は,路線の認定の手続に準じて行わなければならない(同条3項),路線の認定の手続について定める同法8条2項は,当該市町村の議会の議決を経なければならない,同法9条は・・公示しなければならない旨定め,道路法施行規則1条2項は,縮尺1万分の1程度の図面に当該路線を明示し・・般の縦覧に供しなければならない・・と定めている。

 以上のことからすると,・・市町村長の自由裁量行為の範囲に属するものと認めることは到底できず,・・当該市町村道を利用する者の具体的な利益を保護することをも,その趣旨及び目的としているものと解するのが相当である。・・被害を直接的に受けるのは,当該市町村道を具体的に利用する者ということになる。もっとも,・・当該市町村道を少なくとも日常的に利用する者・・の具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであるといわざるを得ない。

 以上のとおりであるから,市町村道を少なくとも日常的に利用する者は,当該市町村道の路線廃止処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者に該当するものと解すべきである。」